「マウスピース矯正は本当に治るのだろうか…」
「ブラケット(ワイヤー)矯正の方が確実なんじゃないか…」
こうした不安を抱かれている患者さんはとても多いです。
今日の初診の方も同じことをおっしゃられていました。
確かに、ネット上では「マウスピース矯正は軽い症例しか治せない」「途中でうまくいかなくなった」という声も散見されます。
しかし、実際には正しい条件がそろえば、マウスピース矯正でもブラケット矯正と同等の治療結果を得ることが可能です。
そのために必要な条件は大きく3つです。
1.正しい治療ゴールを設定すること
2.そのゴールへ導くための方法を熟知していること
3.患者さんご自身の協力
この3つがきちんとそろえば、マウスピース矯正は成功に導くことができます。
1. 正しい治療ゴールと方法を知っているドクターであること
矯正治療の本質は「歯をきれいに並べること」ではなく、「正しい噛み合わせと調和のとれた顔貌を作ること」にあります。
そのためには、大学の矯正学講座に所属して矯正学を専門的に学び、日本矯正歯科学会の認定医を取得する過程で培われる知識と経験が欠かせません。
もしくは、そのような専門家のもとで厳しく研鑽を積んだ歯科医師でなければ、本当の意味で「正しい治療ゴール」を描くことはできません。
ただし、大学で学ぶのは基本的にブラケット矯正が中心です。
つまり、大学で学んだからといって自動的にマウスピース矯正ができるわけではありません。
ですが矯正学の基礎となる理論を理解していないと、そもそも矯正治療そのものを正しく扱うことができないのです。
2. 日本のマウスピース矯正の問題点
残念ながら、日本では「正しい治療ゴール」や「そこへ導くための方法」を知らないままマウスピース矯正を行っている歯科医師も少なくありません。
ひどい例では、経験の浅い1年目の歯科医師に、マウスピース矯正の治療計画(クリンチェック)を丸投げしている医院すら存在します。
これは、教育体制そのものが整っていないことに起因します。
マウスピース矯正は便利で手軽な装置に見えますが、治療計画を立てるドクターの知識と経験が伴わなければ、ただの「透明なマウスピース」で終わってしまうのです。
3. 患者さんの協力があれば結果は出せる
マウスピース矯正は取り外しができる分、患者さんの協力が欠かせません。
・1日20〜22時間の装着を守ること。
・装着時にチューイを噛んでマウスピースの適合を良くすること。
・顎間ゴムを使用すること。
正しい治療計画が設定されていて、これらをきちんと行えば、治療は予定通り進んでいきます。
逆に、ここが守られなければ、どんなに正しい治療計画があっても結果は得られません。
しかし「本気で歯並びを治したい」と思っている方なら、必ず守れる部分でもあります。
今後の教育体制について
現在、日本でもマウスピース矯正の教育体制を確立していこうという流れがあります。
その一つがABAO(アライナー矯正認証協会)という団体です。
今後はこの協会が、マウスピース矯正に必要な教育や認証システムを整えていくことになるでしょう。
ちなみに、その発起人は私自身が学んできたお師匠さまです。
まとめ
マウスピース矯正は「誰がやっても簡単にできる治療」ではありません。
しかし、正しい治療ゴールを描ける知識と経験のある矯正専門医、そして本気で治したいと協力してくださる患者さんがいれば、ブラケット矯正と同等の結果を得ることができます。
「マウスピース矯正は治らないのでは?」と不安に感じている方へ。
安心して治療を受けていただけるよう、私たちは大学での矯正学の基礎、臨床での経験、そして最新のアライナー矯正の技術を駆使して、患者さん一人ひとりの歯並びと笑顔を守っていきます。